思考法

「ひとつ先の夢」を描いてみよう

病や人生の困難などの厳しい状況にある時には、先行きの見えない未来への不安や恐れ、過去の後悔や罪悪感から、今この瞬間に没頭して生きることが難しくなってしまいますよね。

実は、「ひとつ先の未来」を描き、行動に移すことで、事態が好転することがあります。

この記事では、この「ひとつ先の夢」を活用することで、どんな人生の変化が起こり得るのか、そして、「ひとつ先の夢」がどんな役割を果たしてくれるのか、そのメカニズムを説明します。

この記事を読むと、「どんな状況にいても自分のモードを変えられるんだ」と深いところで思えるようになります。その結果、「あなたはどんなことがあっても人生を好転できる」「ひとつ先の未来が今につながっている」という確信を持つことができ、一歩を踏み出せるでしょう。

致死率75%からの生還の秘密

病などの困難な状況にいると、未来への不安から怖れが出てきたり、過去の自分や周りの状況を責めてしまい、今ここの瞬間を生きることができなくなってしまいます。
「ひとつ先の夢」を描いて行動するとき、未来も過去のことも詮索することなく、ただただ没頭して今ここにいることができます。
「ひとつ先の夢」が、私たちを今にとどめるアンカーの役目をしてくれます。
そしてそれに呼応して、実現することを応援するかのように、体が懸命についてきてくれるので、動けてしまうのです。

日本セレンディピティ協会の代表理事をされている馬場英宗さんから、はじめてその話を聞いたときはとても驚きました。ほとばしるほどのエネルギーに満ちていて快活でいかにも健康そうな馬場さんからは想像もつかなかったからです。

馬場さんは、もう何年も前のある日、お風呂で体を洗っているときに、股のあたりのしこりに気づき、おかしいなと思ったそうです。次第に大きくなっていくので病院で検査を受けたところ、ある病名を言い渡されました。

その病気のことを全く知らなかった馬場さんは、大したことはないだろうと、秘書に調べるようにとお願いをして席を立ち、仕事をすませてデスクに戻って来ると、顔面蒼白になって向かってくる秘書に驚きました。

なんと血液のがんと言われる悪性リンパ腫に罹っていたのです。精密検査をすると、病はかなり進んでいて、主治医からはステージⅣ、致死率七十五%と宣告されました。

けれども、馬場さんはそんな厳しい状況から病を克服しました。今ではたくさんの人たちの夢の実現をサポートする仕事をしています。

様々な治療のお陰でもありますが、その最大の秘密は、「ひとつ先の夢を描いたこと」だと、馬場さんは言います。

入院している間に、これだけはどうしてもしたいということを、にんまりしながら企画・計画して実行に移しました。
それは、一番の親友に伴侶となる女性とのご縁を繋げることだったそうです。親友に幸せになって欲しいという心からの思いとわくわくする気持ちが馬場さんの体を回復に導きました。

ちなみに、馬場さんの銀座のサロンにチョコレートを持っていくと、「チョコねぇ男爵」という謎のキャラクター(笑)に扮した馬場さんが、無料相談やコンサルティングをしてくれます。常に「少し先の夢」を生きる、馬場さんの陽気で気さくな溢れんばかりのエネルギーに触れてみてください。

どうしても○○したい理由

「ひとつ先の夢」について、その有効性の根拠があるので紹介させてください。

それは、末期のがんから劇的な寛解に至った人たちへのインタビューから、寛解に重要な役割を果たしたと推測される要素を抽出すると、上位9項目はほぼ全員に共通していた、という米国の研究結果にありました(1)。その9つの中身を紹介します。

  1. 抜本的に食事を変える
  2. 治療法は自分で決める
  3. 直感に従う
  4. ハーブとサプリメントの力を借りる
  5. 抑圧された感情を解き放つ
  6. より前向きに生きる
  7. 周囲の人の支えを受け入れる
  8. 自分の魂と深くつながる
  9. 「どうしても生きたい理由」を持つ

最後の項目に「どうしても生きたい理由を持つ」が挙げられています。

「どうしても生きたい理由」を持つと、人は人生に喜びをもたらすものに意識を向けるために、修復・休息反応がオンになり、体内で免疫向上ホルモンが放出されるのだそうです。
反対に、抑うつ状態にあったり、無力感を感じているがん患者は、そうでない患者よりも生存期間が有意に短かったという例が紹介されています。

綱渡りは、下を見ていると真っ直ぐに歩けずに落ちてしまうので、目線は必ず前を向いている必要があると聞いたことがあります。

「どうしても生きたい理由」を抱くとき、目線は今より先にあります。
そしてその先に自分が存在している姿を強く願って、その光景を視覚化しています。
これは「ひとつ先の夢」と同じことをしています。

生きたい理由や夢を実現した状態を確信することは、未来にそうなることを約束して、その未来から今につながる道を創り出しているように見えます。
それはまるで、決めた未来が、逆に未来から今にやって来る、という感覚です。
すでに、その未来にいる自分を創造していて、「決まっている」からこそ、確信できるのではないでしょうか。

ひとつ先の夢」を書こう

ひとつ先の「夢」と言うと大きな話に聞こえるかもしれませんが、小さなものでも構いません。
自分がしたいこと、ずっとしたかったこと、しようとしてこれまでできなかったことなど、自分が心から望むものなら何でもいいのです。

それが大きな夢でどこから手をつけたらよいか分からなくなってしまったら、小さなステップに分けて、小さな「ひとつ先の夢」に分けてしまいましょう。
分けると、より具体的になって、望んでいることのわずかな差まで分かってきます。

さらに、「ひとつ先の夢」が実現したとして、その時に一体何が起きているのかを、にんまりしながら想像するのもよいでしょう。
その時に、どんな自分になっているか、何をしているか、何を持っているのか、何を分かち合っているのか、などを想像してみて、具体的に書き留めるのも効果的です。
どうか子供心に戻った気持ちで、リラックスして書いてみてください。書くことで未来が動き出します。

「ひとつ先の夢」の一雫の連鎖は、やがて大河のような人生の目的に通じる道となっています。
そして、「ひとつ先の夢」は方位磁針のようでもあります。
その方角に向かって一歩一歩運ぶ足取りは軽やかで、けれども軸はしっかりとしていて、雨風にも雪にも日照りにも負けることなく、私たちを着実に前に進ませてくれます。

まとめ

・ひとつ先の夢を描くことで、人生が好転していく可能性があります。
・どうしても生きたい理由を持つことで、体の回復につながることがあります。
・ひとつ先の夢は、人生の目的の方位磁針のようなもの。リラックスして書いてみましょう。



(1)がんが自然に治る生き方(ケリー・ターナー著、プレジデント社)